
整骨院の料金値上げの進め方|告知文テンプレと離脱を防ぐ実務手順【2026年版】
整骨院の料金値上げの進め方|告知文テンプレと離脱を防ぐ実務手順【2026年版】
整骨院・鍼灸院の料金値上げでまず押さえるべきは、値上げできるのは自費メニュー・物販・回数券などの自費部分だけで、保険(療養費)分は院の裁量では変更できないという点です。柔道整復やはり・きゅう・あん摩マッサージの療養費は、厚生労働省の告示・通知で定める算定基準に従って全国一律に決まっているためです(厚生労働省「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準」)。そのうえで既存患者を離脱させずに進めるコツは、適用の4〜6週間前に告知して十分なリードタイムを取り、販売済みの回数券は旧価格のまま満了まで使えるようにすることです(リードタイムは当社推奨の目安)。
治療院で値上げできる料金・できない料金|まず押さえる3原則
料金値上げを始める前に、「そもそも何を値上げできるのか」を切り分けます。治療院の料金は自費と保険(療養費)に分かれ、院が自由に改定できるのは自費部分だけです。

治療院の値上げで押さえる3原則は次のとおりです。(1) 値上げできるのは自費メニュー・物販・回数券に限られる、(2) 告知は適用の4〜6週間前を目安に十分なリードタイムを取る(当社推奨)、(3) 販売済みの回数券は旧価格のまま消化してもらう。まずは料金区分を早見表で確認します。
| 料金区分 | 具体例 | 院の裁量での値上げ |
|---|---|---|
| 自費メニュー・物販・回数券 | 自費の手技・特別施術、物販、回数券・前売り券 | できる |
| 保険(療養費)分 | 柔道整復・はり・きゅう・あん摩マッサージ指圧の療養費 | できない |
出典:厚生労働省「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準」、はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師の施術に係る療養費関係通知。
保険(療養費)の料金は院では変えられない
柔道整復・あはきの療養費は、厚生労働大臣の告示や保険局長通知による算定基準で施術料金が全国一律に定められており、受領委任を取り扱う施術所は所定の料金を超える金額を患者に請求できません。算定基準は国が定期的に改定しており(直近の改定は柔道整復が令和8年7月1日、あはきが令和6年10月1日の施行)、院が独自に単価を上げることはできません。したがって値上げの検討対象は、自費メニュー・物販・回数券などの自費部分に絞ります。自費メニューそのものの設計は整骨院の自費メニューの作り方もあわせてご覧ください。
値上げ前に決める3つの前提(対象・幅・タイミング)
告知に入る前に、どのメニューを・どれくらい・いつから上げるかを決めます。この3点があいまいなまま告知すると、患者からの質問に答えられず不信につながります。

対象メニューを選ぶ
まず値上げの対象を、自費メニュー・回数券・物販の中から選びます。すべてを一律に上げるのではなく、原価や手間の増えたメニュー、相場と乖離したメニューから優先します。保険(療養費)分は前述のとおり対象外です。回数券を対象にする場合は、販売済み分の扱い(後述)を必ずセットで決めます。
値上げ幅を決める
値上げ幅は、材料費・人件費・光熱費などの原価上昇分と近隣の相場から逆算します。一度に大きく上げるより、対象と理由を明確にして段階的に調整するほうが納得を得やすくなります。採算全体の見直しは整骨院の収益改善で他のレバーとあわせて検討すると効果的です。
適用タイミングを決める
適用日は、告知のリードタイムを確保できる日程に設定します。繁忙期の直前や年度替わりなど、患者が変化を受け入れやすい区切りに合わせると告知しやすくなります。日程が決まったら、そこから逆算して告知スケジュールを組みます。
既存患者への告知の進め方(リードタイムとチャネル)
値上げで最も差が出るのが告知の進め方です。十分なリードタイムを取り、チャネルを使い分けることで、告知直後のキャンセルや失客を抑えられます。

告知リードタイムのひな型(当社推奨)
告知は「適用の4〜6週間前に一次告知→2週間前にリマインド→適用日」の流れを目安にします。これは当社(治療院HUB)が推奨する目安であり、法令や業界で定められた基準ではありません。リードタイムを長めに取るほど、患者が心づもりや回数券の購入判断をする余裕が生まれます。
| タイミング | 主な内容 |
|---|---|
| 適用の4〜6週間前 | 一次告知(改定日・対象・新料金を院内掲示やLINEで周知) |
| 適用の2週間前 | リマインド(回数券の駆け込み購入や質問に対応) |
| 適用日 | 新料金へ切替。販売済み回数券は旧料金で消化 |
告知チャネルの使い分け
告知は院内掲示・LINE配信・受付での口頭を組み合わせます。院内掲示や自院サイトでの料金案内は、原則として柔道整復師法・あはき法の広告規制の対象外です(自院サイトは一般に「認知性」を満たさないため。厚生労働省「あはき・柔整広告ガイドライン」令和7年2月18日)。一方、LINEの一斉配信やWeb告知は媒体や出し方によって「広告」に当たる可能性が残るため、料金や効果の表現には注意し、事実の告知にとどめます。料金は税込の総額で表示します(課税事業者の総額表示義務。消費税法第63条、国税庁タックスアンサーNo.6902)。免税事業者は義務の対象外ですが、患者の誤解を防ぐため税込表示をおすすめします。LINEを再来案内に活用する方法は整骨院のLINE公式アカウント活用も参考にしてください。
回数券・前売り残の扱い
すでに販売した回数券は、原則として旧料金のまま満了まで使えるようにします。いったん成立した契約の内容を、事業者が後から一方的に不利に変更することはできないためです(消費者契約法第10条の趣旨とも整合します)。告知文には「販売済みの回数券は旧価格のまま有効期限までご利用いただけます」と明記してトラブルを防ぎます。なお回数券は資金決済法上の前払式支払手段に当たる場合がありますが、未使用残高が基準額(1,000万円)を超える規模でなければ届出等の対象外で、多くの単店治療院は該当しません。回数券の設計そのものは整骨院の回数券の作り方を参照してください。
そのまま使える値上げ告知文テンプレート
告知文には最低限、次の5項目を入れます。(1) 改定日、(2) 対象メニュー、(3) 改定後の料金(税込総額)、(4) 値上げの理由、(5) 既存回数券の扱い。旧価格と新価格を併記する場合は、実際の販売実績に基づく正確な表示にとどめ、「今だけ」などの過度な強調は避けます(景品表示法の不当な二重価格表示・有利誤認に注意。景表法第5条第2号、消費者庁「価格表示ガイドライン」)。

院内掲示用テンプレート
【料金改定のお知らせ】 いつも当院をご利用いただきありがとうございます。20XX年X月X日より、下記の自費メニューの料金を改定いたします。 ・対象:〇〇コース(税込X,XXX円 → 税込X,XXX円) ・改定日:20XX年X月X日 ・理由:材料費・人件費の上昇に対応し、施術の質を維持するため ・回数券:販売済みの回数券は旧価格のまま有効期限までご利用いただけます 今後ともより良い施術に努めてまいります。
LINE配信用テンプレート
いつもご来院ありがとうございます。X月X日より自費メニューの料金を改定いたします(〇〇コース 税込X,XXX円)。すでにお持ちの回数券は旧価格のまま有効期限までお使いいただけます。ご不明点は受付までお気軽にお尋ねください。
一斉配信は媒体により広告規制に触れる可能性があるため、料金と改定日の事実告知にとどめ、効果や優位性を訴える表現は避けます。
回数券残の案内文テンプレート
回数券をご利用中のお客様へ。X月X日の料金改定後も、販売済みの回数券は旧価格のまま、有効期限まで従来どおりご利用いただけます。追加のご負担はありません。安心して最後までお使いください。
値上げ後の離脱(患者離れ)を防ぐ対策
値上げは告知して終わりではなく、適用後の離脱を抑える対策までがワンセットです。値上げ直後は来院間隔が延びる患者が出やすいため、価値の実感とフォローで取りこぼしを防ぎます。

値上げと同時に価値を見える化する
料金を上げるタイミングで、施術内容・所要時間・アフターケアなど、何にお金を払っているかを患者に見える形で伝えます。ビフォーアフターの共有や次回の施術方針の説明など、価値が伝わる接点を増やすことで、値上げ幅への納得感が高まります。
離脱の予兆を来院間隔で捉える
離脱は予約が途切れる前に、来院間隔が徐々に延びるサインとして表れます。当社の治療院HUBのLINE再来データでも、告知から適用までのリードタイムを長く取った院ほど、告知直後のキャンセルや失客が起きにくい傾向がみられます(具体的な数値は院ごとに差があるため、傾向としての知見です)。来院間隔の変化を早めに把握できる仕組みがあると、フォローの初動が早くなります。
離脱者へのフォロー導線をつくる
来院間隔が延びた患者には、LINEなどで再来を促す導線を用意します。治療院HUBは、予約・回数券管理・LINE再来案内・施術記録を一つに集約する患者管理システムで、来院間隔に応じた案内で失客を防ぎます。保険請求(レセプト)は既存のレセコンが担い、治療院HUBは患者管理を受け持つ役割分担で併用できます。値上げをきっかけとした離脱対策は整骨院の患者離れ対策もあわせてご覧ください。
よくある質問
Q1. 治療院の値上げは保険診療の料金も上げられますか?
いいえ。保険診療(柔道整復・あん摩マッサージ・はり・きゅうの療養費)は国が定める算定基準に基づく料金のため、施術所が任意に改定することはできません(厚生労働省の算定基準)。値上げできるのは自費メニュー・物販・回数券など自費部分に限られます。
Q2. 料金値上げの告知は適用のどれくらい前に行うべきですか?
適用の4〜6週間前に一次告知を行い、2週間前にリマインドするのが当社推奨の目安です(法令上の定めではありません)。リードタイムを十分に取るほど、告知直後の予約キャンセルや失客が起きにくくなります。
Q3. すでに販売した回数券は値上げ後どう扱えばよいですか?
販売済みの回数券は、原則として旧料金のまま満了まで使えるようにします。成立した契約を後から一方的に不利に変更することはできないためです(消費者契約法第10条の趣旨とも整合)。告知文に「販売済み分は旧価格で消化できます」と明記します。
Q4. 値上げで患者が離れないようにするには何をすればよいですか?
値上げと同時に施術内容や所要時間などの価値を見える化し、来院間隔が延びた患者をLINE再来などで早めにフォローします。値上げ幅は一度に大きく上げず、対象と理由を明確に伝えることが離脱防止に有効です。
Q5. 値上げの告知文には何を書けばよいですか?
改定日・対象メニュー・改定後の料金(税込総額)・値上げの理由・既存回数券の扱いの5項目を簡潔にまとめます。料金は税込で表示し(消費税法第63条)、旧価格を併記する場合は正確な表示にとどめます。本記事では院内掲示用・LINE配信用・回数券残の3種のテンプレートを掲載しています。
まとめ
治療院の料金値上げで変更できるのは自費メニュー・物販・回数券などの自費部分だけで、保険(療養費)分は国の算定基準で定まるため院では変更できません。対象・幅・タイミングを決め、適用の4〜6週間前を目安に告知し(当社推奨のリードタイム)、販売済みの回数券は旧価格のまま消化してもらうのが基本です。告知文には改定日・対象・改定後料金(税込)・理由・回数券の扱いの5項目を入れ、旧価格併記や一斉配信は広告規制・二重価格表示に配慮します。値上げ後は価値の見える化と来院間隔でのフォローで離脱を防ぎます。
値上げ後の離脱対策を、患者管理と一体で
治療院HUBは整骨院・鍼灸院向けの患者管理システムです。予約・回数券管理・LINE再来案内・施術記録を一つに集約し、来院間隔の変化に応じたフォローで値上げ後の失客を防ぎます。保険請求(レセプト)は既存のレセコンがそのまま担うため、乗り換えずに併用できます。
料金・機能の詳細や無料での製品体験は、お問い合わせ・資料請求からご確認いただけます。
著者・監修:依田尚人(YDAIコンサルティング株式会社 代表)
整骨院・鍼灸院向け業務管理SaaS「治療院HUB」を開発・運営するYDAIコンサルティング株式会社の代表。治療院の予約・患者管理、保険と自費の運用設計に関する情報発信を行っています。本記事は厚生労働省・消費者庁・国税庁などの一次資料に基づいて作成しています。


