整骨院の利益率改善・黒字化ガイド|コスト構造と収支モデルで赤字脱却
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整骨院の利益率改善・黒字化ガイド|コスト構造と収支モデルで赤字脱却

2026年7月5日25分で読める

整骨院の利益率改善・黒字化ガイド|コスト構造と収支モデルで赤字脱却

「売上はそこそこあるのに手元にお金が残らない」「黒字化するには月いくら売ればいいのか分からない」——整骨院・鍼灸院の経営でつまずきやすいのが、この利益の数字です。

結論から言うと、整骨院の利益率は「客単価」「来院数」「コスト構造」の3つで決まり、改善の起点は損益分岐点売上を自院の数字で把握することです。本記事では利益率の定義、伸びない原因(コスト構造)、客単価・自費比率の打ち手、前提を明示した1人院の月次収支モデル試算までを早見表で整理します。

整骨院の利益率はどれくらいが目安か(定義と現状)

整骨院の利益率に「一律の平均」は存在しません。営業利益率(営業利益÷売上高)は売上規模・1人院かスタッフ院か・自費比率で大きく振れるためです。まず計算式を押さえ、自院の数字で求めるのが出発点です。

利益率(営業利益率)の計算式と治療院での見方

利益率は次の式で求めます。

営業利益 = 売上高 − 変動費 − 固定費 営業利益率 = 営業利益 ÷ 売上高 × 100(手元に残る割合) 限界利益率 = (売上高 − 変動費)÷ 売上高(固定費の回収力)

治療院でまず見るべきは限界利益率です。整骨院は施術中心で変動費が小さく限界利益率が高くなりやすい一方、家賃・人件費の固定費比率が高い構造です。つまり「固定費を超えて売れているか」で黒字・赤字が決まります。

整骨院の利益率に関わる計算式の早見表
整骨院の利益率に関わる計算式の早見表

整骨院・鍼灸院の利益が出にくい構造的な背景

利益が出にくい背景は、競争密度の上昇と保険収入の構造変化にあります。これは精神論ではなく公的統計で裏づけられる環境要因です。

厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)」によると、柔道整復の施術所は全国で50,924か所、就業柔道整復師は78,666人にのぼり高止まりしており、限られた商圏で患者を奪い合う構図が続いています。

加えて保険(柔道整復療養費)も無条件に増える時代ではありません。厚生労働省の療養費改定では令和8年7月施行で多部位施術の逓減が強化され、長期・頻回受療の適正化も進みます。基本料金が一律に下がるわけではありませんが、「保険の多部位・長期で稼ぐ」モデルは通用しにくく、コスト構造と自費単価の見直しが本筋です。

廃業に至る背景や経営リスクの全体像は、整骨院の廃業率と生き残るための対策|倒産しやすい院の共通点で詳しく整理しています。

利益率が伸びない原因はコスト構造にある

利益率が伸びない最大の原因は、売上ではなくコスト構造にあります。整骨院のコストは「固定費(人件費・家賃)」と「変動費(材料費・決済手数料)」に分かれ、利益を圧迫するのはほぼ固定費です。費目別の売上比の目安は次の通りです。

費目区分売上比の目安見直しの方向
人件費(スタッフ)固定費20〜35%程度生産性で見る
家賃固定費10〜15%程度席数・立地の総額
水道光熱・通信固定費3〜5%程度契約見直し
広告・販促固定費(投資的)5〜10%程度費用対効果で配分
材料費・消耗品変動費3〜7%程度仕入れ・在庫管理
キャッシュレス手数料変動費決済額の3%前後比率と料率の確認

※上記は1店舗の個人院を想定した一般的な目安レンジで、立地・診療形態により大きく変わります。

人件費:売上比の目安と1人院・スタッフ院の違い

人件費は固定費の中で最も大きく、利益を左右する筆頭です。ただし削減対象としてだけ見るのは危険です。

スタッフを雇う院では人件費が売上の20〜35%程度を占め、ここが重いと利益が消えます。一方、施術者1人で回す1人院は人件費(自分の取り分を除く)をほぼゼロにでき黒字化しやすい構造です。参考として厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」では柔道整復師を含む「その他の保健医療従事者」の平均年収は約430万円とされ、これがスタッフ1人の人件費の目安水準です。重要なのは「1人あたりがいくら売上を生むか(生産性)」で見ること。人を増やすなら、その人件費を上回る売上をつくれるかが判断基準です。

家賃・固定費:立地と席数のバランス

家賃は売上に連動しない固定費なので、稼働とのバランスがすべてです。「席数(同時施術できる人数)」あたりで考えると判断を誤りません。駅前の高家賃でも席数が多く回転すれば家賃比率は下がり、逆にベッド1台の好立地・高家賃は利益が出にくい典型です。家賃は契約後に変えにくく、開業時の判断が後年まで利益を縛ります。日本政策金融公庫「2024年度新規開業実態調査」では全業種の開業費用は平均985万円・中央値580万円とされ、内装・物件取得が初期固定費の大半を占めます。立地と席数は開業前に利益から逆算しておくべき項目です。

整骨院のコスト構造と費目別の売上比目安
整骨院のコスト構造と費目別の売上比目安

材料費・変動費:消耗品とキャッシュレス決済手数料

変動費は固定費より小さいものの、放置すると利益をじわじわ削ります。整骨院の変動費は消耗品(テーピング・備品)と決済手数料が中心です。

材料費は売上の3〜7%程度で、仕入れ単価と在庫の見直しで数%改善できます。見落としやすいのがキャッシュレス決済手数料(決済額の3%前後)です。ただし変動費の削減幅は限られるため、利益改善の主役は固定費の最適化と客単価アップです。

客単価と自費比率を上げる利益改善の打ち手

利益率を上げる最も効果が大きい打ち手は、コスト削減ではなく客単価と自費比率の引き上げです。整骨院は限界利益率が高く、増えた売上の大部分が利益に乗るためです。

自費メニューと回数券で客単価を底上げする

客単価を上げる王道は、自費メニューと回数券の設計です。保険診療だけでは1回の単価に上限があるからです。

自費メニュー(自費の手技・物販等)は単価を院側で設定でき、客単価を押し上げます。回数券は「前受け」でキャッシュフローを安定させ継続来院も促します。ただし、あん摩マッサージ・はり・きゅう・柔道整復には広告規制があり、効果効能をうたう表現や誇大な宣伝はできません。「必ず治る」等の断定は避け、施術内容とメニュー料金を正確に伝える設計にしてください。

自費メニューの作り方・価格設定・導線づくりは、整骨院の自費メニュー導入ガイド|単価アップと作り方の手順で具体的に解説しています。

再来率を上げて新規依存のコストを下げる

利益改善でコスト削減より優先すべきは、再来率(リピート率)の向上です。新規集客は広告費で獲得コストが高いのに対し、既存患者の再来は追加コストがほぼかからないためです。

再来率が低い院は、毎月の売上を新規で埋め続ける「自転車操業」になりがちで、広告費が利益を食います。来院間隔が空いた患者へのリマインドや回数券の消化状況に応じた声かけで離脱を防げば、同じ売上でも利益は厚くなります。

治療院HUBの離脱・リピート分析を使えば、どの患者が離脱しかけているか・回数券の消化状況を数値で把握でき、打ち手の優先順位を判断しやすくなります。

再来率の考え方と具体的な引き上げ方は、整骨院のリピート率の目安と上げる方法|離脱を防ぐ仕組みづくりを参照してください。

客単価と再来率を上げる利益改善の打ち手マップ
客単価と再来率を上げる利益改善の打ち手マップ

損益分岐点と1人院の収支モデル試算

黒字化に必要な売上は計算で求まります。鍵は損益分岐点売上で、自院の数字に当てはめれば「月いくら・何人で黒字か」が見えます。

損益分岐点売上の計算式を治療院に当てはめる

損益分岐点売上とは、利益がゼロになる売上高です。計算式は次の通りで、中小企業庁の経営支援サイト(J-Net21)でも基本指標として示されています。

損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率 (限界利益率 = (売上高 − 変動費)÷ 売上高)

治療院は変動費が小さく限界利益率が高いため、固定費をほぼそのまま割れば損益分岐点が出ます。たとえば固定費月45万円・限界利益率90%なら、損益分岐点売上は45万円÷0.9=50万円。これを超えた分の約9割が利益になり、来院数×客単価に分解すれば「1日何人来れば黒字か」まで落とし込めます。

1人院の月次収支モデル試算(前提明示の早見表)

1人院は固定費が低いため、黒字化のハードルは下がります。下表は実在の特定院の実数ではなく、前提を明示した一般的な目安レンジの試算モデルです。

項目区分金額(月)前提
売上80万円客単価5,000円 × 月160人
材料費・消耗品変動費△4万円売上の約5%
決済手数料変動費△1.2万円決済比率50%・料率3%
限界利益74.8万円限界利益率 約94%
家賃固定費△12万円売上の約15%
水道光熱・通信固定費△4万円売上の約5%
広告・販促固定費△6万円売上の約7.5%
その他固定費固定費△3万円保険・備品リース等
固定費合計固定費△25万円人件費は利益から確保
営業利益(手残り)約49.8万円限界利益−固定費

この前提では損益分岐点売上=固定費25万円÷限界利益率0.94=約26.6万円。客単価5,000円なら月約54人(1日約3人)で固定費を回収し、それを超えた来院数がそのまま手残りになります。1人院は家賃と稼働率でほぼ利益が決まるため、客単価を6,000円に上げるだけでも手残りは大きく動きます。

1人院の月次収支モデルと損益分岐点の試算
1人院の月次収支モデルと損益分岐点の試算

利益率を含む経営数値全体の管理の進め方は、整骨院の経営KPI管理|数字で見る経営指標にまとめています。

客単価とリピートの数値を治療院HUBで管理する

利益率の改善は、客単価と再来という2つの数字を継続的に動かせるかで決まります。この2つを可視化できていない院は、どこを直せば利益が増えるのか判断できません。

治療院HUBは、患者管理・予約管理(LINE連携)・LINE自動配信・離脱/リピート分析を1つに集約した整骨院・鍼灸院向けの業務管理SaaSです。どの患者が離脱しかけているか、回数券や自費メニューの利用状況を数値で把握でき、損益分岐点を超える来院数と客単価の維持を管理できます。なおレセプト・保険請求機能はないため、保険施術分は既存レセコンとの併用が前提です。

システム導入の費用相場は、治療院システムの費用相場|初期費用・月額・選び方で価格帯ごとに整理しています。

よくある質問

Q1. 整骨院の利益率の平均はどれくらいですか?

整骨院の利益率に「一律の平均」は存在しません。営業利益率は売上規模・人件費構成・自費比率で大きく振れ、固定費比率が高く利益が圧迫されやすい構造だからです。平均値を当てにするより、自院の「売上 − 変動費 − 固定費=営業利益」を計算して利益率を把握するのが正解です。

Q2. 整骨院を黒字化するには月いくら売上が必要ですか?

黒字化に必要な売上は「固定費÷限界利益率(損益分岐点売上)」で求まります。たとえば固定費25万円・限界利益率94%の1人院なら約26.6万円が損益分岐点。客単価で割れば必要来院数が出ます(客単価5,000円なら月約54人)。本記事の収支モデル試算を参考に、自院の固定費から逆算してください。

Q3. 整骨院のコストで一番削るべきはどこですか?

最も金額が大きい固定費は人件費と家賃なので、まず固定費の見直しが効果的です。ただし人件費や広告費を闇雲に削ると売上が落ちて逆効果になりかねません。「削減すべき固定費(家賃・通信・無駄な経費)」と「投資すべき費目(客単価・再来施策・効果の出ている広告)」を分けるのが原則です。変動費は削減幅が小さいため後回しで構いません。

Q4. 利益率を上げるには自費メニューを増やすべきですか?

自費メニューは客単価を上げられるため利益改善に有効です。整骨院は限界利益率が高く、増えた単価の大部分が利益に乗ります。ただし保険診療と自費の役割分担を明確にし、あはき・柔整の広告規制に配慮した表現が必要です。回数券の前受けで客単価とキャッシュフローを安定させる方法も有効です。

Q5. 1人院(個人整骨院)でも利益を出せますか?

出せます。人件費(スタッフ分)を抑えられる1人院は固定費が低く黒字化しやすい構造です。一方で施術者1人ぶんの売上には上限があるため、客単価と稼働率の最適化が利益の鍵です。収支モデル試算のとおり1人院の利益は家賃と稼働率でほぼ決まり、客単価アップや来院数1割増が大きな手残りにつながります。

まとめ

整骨院の利益率改善は、精神論ではなく数字で進めるのが近道です。まず営業利益率と限界利益率で現状を把握し、利益を圧迫する固定費(人件費・家賃)を見直します。次に損益分岐点売上(固定費÷限界利益率)で「月いくら・1日何人で黒字か」を明確にし、それを超えるために客単価と再来率を上げます。特に1人院は家賃と稼働率で利益がほぼ決まります。コスト削減と投資を分けて考え、数字を可視化して動かすことが黒字化の本筋です。

整骨院の利益率改善の流れ(現状把握→固定費見直し→損益分岐点→客単価・再来)
整骨院の利益率改善の流れ(現状把握→固定費見直し→損益分岐点→客単価・再来)

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