
整骨院の保険者照会(患者調査)対応ガイド|回答手順・NG例・施術録との整合【2026年版】
整骨院の保険者照会(患者調査)対応ガイド|回答手順・NG例・施術録との整合【2026年版】
保険者から照会文書(患者調査)が届いたら、まず「患者本人が記入する回答書」か「施術所(施術管理者)が答える施術者照会」かを見分け、施術録に記録した事実と照らし合わせて期限内に回答する——これが不支給や返還を避ける正しい対応です。照会は施術所を一方的に不支給にする道具ではなく、保険者が療養費の支給を適正に判断するための事実確認の手続きです(厚生労働省「柔道整復療養費の被保険者等への照会について」平成30年5月24日事務連絡、令和4年10月改正)。慌てて代筆したり放置したりせず、手順どおり対応すれば多くの照会は問題なく完了します。療養費制度そのものの全体像は整骨院の受領委任・療養費(保険)入門にゆずり、本記事は「照会が届いた後の対応手順」に絞って解説します。
保険者からの照会文書(患者調査)とは|2種類の見分け方
照会文書は、保険者が療養費の支給を決める前に、施術の事実を確認するために送る文書です。呼び方は保険者によって「患者調査」「照会文書」などと異なるため、届いた文書の名称・宛先・回答する人を最初に確認します。まず全体像を早見表で押さえましょう。

照会文書(患者調査)の目的と根拠
保険者は療養費支給の適正化のため、施術内容・回数等を患者等に照会して事実確認に努めることとされています(厚生労働省「柔道整復療養費の被保険者等への照会について」平成30年5月24日事務連絡、令和4年10月改正)。同改正では、明細書の提出がないことのみをもって不支給決定をすることは適切でない旨も周知されており、照会はあくまで事実を確かめる手続きだと理解しておくことが大切です。誠実に事実を回答すれば過度に身構える必要はありません。
「被保険者宛の回答書」と「施術管理者宛の施術者照会」の違い
照会には、患者(被保険者)本人が答えるものと、施術所(施術管理者)が答えるものの2種類があります。厚生労働省は「被保険者等への照会」という枠組みで両方を扱っており、宛先で見分けるのが基本です。回答する人・関与できる範囲・放置したときのリスクが異なるため、まずどちらの照会かを判別します。
| 区分 | 被保険者宛の回答書 | 施術管理者宛の施術者照会 |
|---|---|---|
| 記入・回答する人 | 患者本人 | 施術所(施術管理者) |
| 主な確認内容 | 来院日・負担金・施術内容の実態 | 負傷原因・部位・施術内容・来院日 |
| 施術所の関与 | 本人記入を案内するのみ(代筆不可) | 施術録にもとづき事実を回答 |
| 回答期限 | 文書に記載された期限に従う | 文書に記載された期限に従う |
| 放置した場合 | 償還払いへの変更等 | 不支給・返還・受領委任中止の恐れ |
回答期限は法律で一律の日数が決まっているわけではないため、文書に記載された期限に従います。
照会文書が届いたら|施術所が取るべき対応4ステップ
対応は「種別確認 → 施術録照合 → 事実回答 → 控え保存」の4ステップで進めると抜けがありません。以下は自社作成の対応チェックリストです。

| ステップ | やること | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 1 種別・期限の確認 | 宛先・文書名・対象患者・回答期限を確認 | 被保険者宛か施術管理者宛か |
| 2 施術録との照合 | 照会内容と施術録の記載を突き合わせる | 負傷原因・部位・来院日の整合 |
| 3 事実回答 | 施術録に記録した事実のみを回答 | 傷病名の断定・推測を書かない |
| 4 控えの保存 | 回答書の写しを施術録とあわせて保存 | 後日の再照会・確認に備える |
手順1・2:種別と期限を確認し、施術録と照合する
最初に、宛先(被保険者宛か施術管理者宛か)・回答期限・対象となる患者と施術を確認します。次に、照会された内容を施術録の記載と突き合わせます。負傷原因・受傷機転・部位・施術内容・来院日が施術録と食い違わないかを、回答する前に必ず照合してください。柔道整復師は傷病名の診断を行えません(診断は医師の独占業務。医師法第17条)。回答は施術録に記録した事実にとどめ、医学的な診断や断定は書きません。負傷原因の記録は初回の問診が起点になるため、整骨院の問診票の作り方もあわせて整えておくと照合がスムーズです。
手順3・4:本人記入を案内し、回答の控えを保存する
患者宛の回答書は、患者本人が事実にもとづいて記入する書類です。施術所が代筆したり記入内容を誘導したりしてはいけません。患者には「事実をご自身で記入してください」と案内するにとどめます。施術管理者宛の照会に答える場合も、受領委任にともなう正当な業務の範囲で事実を回答します。個人情報の取り扱いに不安がある場合は治療院の個人情報・プライバシー対応を参照し、判断に迷うときは保険者や都道府県の柔道整復師会に確認します。回答後は必ず控え(写し)を施術録とあわせて保存します。
回答時のNG例と、不支給・返還・受領委任中止を招く落とし穴
照会対応でトラブルになるのは、たいてい事実と違うことを書いたり、期限を過ぎたりしたときです。次の5つは避けるべき対応です。

- 代筆:患者宛の回答書を施術所が記入する
- 口裏合わせ:患者に回答内容を指示・誘導する
- 未回答放置:回答期限を過ぎても対応しない
- 施術録との齟齬:施術録と食い違う内容を回答する
- 遡及修正:照会後に施術録をさかのぼって書き換える
これらはいずれも不正請求を疑われる行為です。照会への未回答・虚偽回答や施術録との齟齬は、療養費の不支給・返還や、悪質と判断された場合の受領委任の取扱い中止につながりえます(受領委任の取扱規程・関係通知にもとづく運用)。逆に、事実にもとづき期限内に誠実に回答していれば避けられます。「ばれない書き方」を探すのではなく、事実・整合・期限内回答を貫くことが最短の対策です。
「照会に答えられない」原因は日々の記録不足
照会が来てから慌てるのは、日々の施術録に負傷原因や来院日が十分に残っていないことが原因です。施術録は療養費請求の根拠となる書類であり、施術完結の日から5年間保管することとされています(厚生労働省通知「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準の実施上の留意事項等について」平成9年4月17日保険発第57号)。日々の記録が整っていれば、照会は「記録を写して答えるだけ」の作業になります。記録運用の詳しい設計は整骨院のカルテ・施術録の書き方を参照してください。
よくある照会事例の類型と、照会に耐える記録運用
実際の照会は、いくつかの典型的な類型に整理できます。以下は匿名化した自社整理の3類型で、どの類型でも備えの中心は日々の施術録です。

| 照会類型 | 保険者が確認したいこと | 施術所の備え |
|---|---|---|
| 多部位・長期/頻回 | 施術の必要性・回数の妥当性 | 各部位の負傷原因と経過を記録 |
| 負傷原因の確認 | いつ・どこで・どうケガをしたか | 受傷機転を初回問診で具体的に記録 |
| 来院実態の確認 | 実際に来院・施術したか | 来院日・施術内容を毎回記録 |
多部位・長期・頻回の施術や、負傷原因が不明確なケースは照会されやすい傾向があります。ただし「何部位以上」「何か月超」といった具体的なトリガーは、保険者や最新の通知の運用によります。多部位施術の算定ルール(逓減)は令和8年7月1日施行の療養費改定で見直されており、部位数ごとの取り扱いは最新の通知で確認します(厚生労働省「柔道整復師の施術に係る療養費の改定等について」)。また、一定の長期・多部位に該当する患者は、受領委任から償還払いへ変更されることがあります(令和8年度改定・最新の通知による)。なお、はり・きゅう・あん摩マッサージ(あはき)の療養費でも同様に照会の仕組みが別の通知で設けられています(鍼灸院の場合は鍼灸院の保険適用と療養費請求を参照)。
施術録とCRM患者記録の役割分担で「いつでも答えられる」状態をつくる
照会に即応するには、療養費請求の根拠となる施術録と、来院履歴や連絡記録を残す患者管理(CRM)を役割分担して運用するのが有効です。どの情報をどこに残すかを決めておけば、照会が届いても短時間で照合できます。

| 記録する情報 | 主な記録先 | 照会での用途 |
|---|---|---|
| 負傷原因・受傷機転 | 施術録 | 負傷原因の確認への回答 |
| 部位・施術内容 | 施術録 | 施術の必要性の説明 |
| 来院日・施術日 | 施術録+患者管理 | 来院実態の確認への回答 |
| 連絡・再来案内の履歴 | 患者管理 | 通院経過の裏づけ |
治療院HUBは、来院履歴や連絡記録を一元管理し、負傷原因や来院日をすぐ照合できる状態づくりを支える患者管理システムです。保険請求(レセプト)は既存のレセコンがそのまま担い、治療院HUBは患者管理を受け持つ役割分担で併用できます。治療院HUBが照会への回答や療養費請求を代行・自動化するものではなく、あくまで日々の記録を整えて照会に備えやすくする道具です。
よくある質問
Q1. 保険者から届く照会文書(患者調査)とは何ですか?
療養費の適正化のため保険者が施術の事実を確認する文書で、患者本人が記入する「被保険者宛の回答書」と、施術所が答える「施術管理者宛の施術者照会」の2種類があります(厚生労働省「柔道整復療養費の被保険者等への照会について」)。まずどちらの照会かを見分けることが対応の起点です。
Q2. 患者宛の照会(回答書)を施術所が代筆してもよいですか?
いけません。回答書は患者本人が事実にもとづいて記入する書類です。施術所が代筆したり記入内容を誘導したりすると不正請求を疑われ、不支給や受領委任の取扱い中止につながります。患者には「事実をご自身で記入してください」と案内します。
Q3. 施術所宛の照会には何を基準に回答すればよいですか?
施術録に記録した事実(負傷原因・部位・施術内容・来院日)にもとづいて回答します。柔道整復師は傷病名の診断ができない(医師法第17条)ため、診断的な断定は書きません。施術録と回答が食い違うと不支給・返還の対象になりえるので、回答前に必ず施術録と照合します。
Q4. 照会に回答しないとどうなりますか?
未回答や虚偽回答は療養費の不支給・返還につながり、悪質と判断された場合は受領委任の取扱い中止に至る可能性があります。患者が照会に応じない場合は、受領委任から償還払いへ変更されることもあります。まず回答期限を確認し、期限内に対応することが重要です。
Q5. どんな施術が照会の対象になりやすいですか?
多部位・長期・頻回の施術や、負傷原因が不明確なケースが照会されやすい傾向です。具体的な部位数や期間の基準は保険者や最新の通知の運用によるため、届いた照会文書の記載に沿って確認します。
まとめ
保険者からの照会(患者調査)は、施術所を一方的に不支給にするものではなく、療養費の支給を適正に判断するための事実確認です。届いたらまず被保険者宛か施術管理者宛かを見分け、施術録と照合してから、事実にもとづき期限内に回答します。代筆・口裏合わせ・未回答放置・施術録との齟齬・遡及修正は不正請求を疑われる行為で、不支給・返還・受領委任中止に直結します。日々の施術録(施術完結の日から5年間保管)と患者記録を整えておけば、照会は記録を写して答えるだけの作業になります。軸は一貫して事実・整合・期限内回答です。
照会に即応できる患者記録を、日々の運用から
治療院HUBは整骨院・鍼灸院向けの業務管理SaaSです。来院履歴や連絡記録を一元管理し、負傷原因・部位・来院日をすぐ照合できる状態づくりを支えます。保険請求(レセプト)は既存のレセコンがそのまま担うため、乗り換えずに併用できます。
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著者・監修:依田尚人(YDAIコンサルティング株式会社 代表)
整骨院・鍼灸院向け業務管理SaaS「治療院HUB」を開発・運営。治療院の予約・患者管理、保険と自費の運用設計に関する情報発信を行っています。本記事は厚生労働省の通知など一次資料に基づいて作成しています。


