
整骨院の自賠責保険 施術費請求ガイド|施術費明細書・施術証明書の書き方と3つの請求方法【2026年版】
整骨院の自賠責保険 施術費請求ガイド|施術費明細書・施術証明書の書き方と3つの請求方法【2026年版】
整骨院・接骨院の自賠責保険の施術費請求には、加害者側の任意保険会社が窓口対応する「一括対応」、被害者が自賠責保険会社へ直接請求する「被害者請求(自賠法16条)」、加害者が賠償後に請求する「加害者請求(自賠法15条)」の3つの方法があり、実務の多くは一括対応で進みます。提出書類の基本は施術費明細書と施術証明書の2点で、多くの保険会社では両者を一体にした「施術証明書兼施術費明細書」が使われます。
本記事では、この3つの請求方法と書類の書き方、自賠責の施術費が労災の柔道整復施術料金を目安に算定され健康保険の療養費(レセコン請求)とは別建てになる点までを、自動車損害賠償保障法(e-Gov)や国土交通省の一次資料で整理します。柔道整復師は診断ができないなど、適正な施術・正確な施術録に基づく請求を前提とします。
整骨院の自賠責保険 施術費請求とは|3つの請求方法の早見表

自賠責保険は交通事故の被害者救済を目的とした強制保険で、交通事故によるケガの施術費は加害者側の自賠責保険から支払われるのが原則です。整骨院はこの施術費を保険会社へ請求します。請求方法は次の3つに整理できます。
| 請求方法 | 誰が請求するか | 主な流れ | 患者の窓口負担 |
|---|---|---|---|
| 一括対応(任意一括) | 加害者側の任意保険会社 | 自賠責分を含め立替払いし院へ直接支払う | 原則なし |
| 被害者請求(自賠法16条) | 被害者本人 | 加害者側の自賠責保険会社へ直接請求 | 立替後に請求 |
| 加害者請求(自賠法15条) | 加害者(被保険者) | 被害者へ賠償した限度で自賠責へ請求 | 立替後に精算 |
出典:自動車損害賠償保障法(昭和30年法律第97号)第15条・第16条第1項(e-Gov法令検索)、日本損害保険協会「損害保険Q&A くるまの保険」問40。
自賠責保険で支払われる傷害による損害の限度額は、被害者1名につき120万円です(治療費・慰謝料・休業損害・通院交通費等を含む/国土交通省「自賠責保険・共済の限度額と補償内容」)。整骨院の施術費も、この枠内で請求します。
自賠責・健康保険(療養費)・労災の違い|料金と請求ルートが別建てになる理由

自賠責は労災の柔整施術料金を目安に算定|レセコン(健保請求)と別建て
自賠責保険の柔道整復施術には、健康保険の療養費のような全国一律の公定料金表がありません。実務では、労災保険の柔道整復師施術料金算定基準を目安に、施術者が保険会社と対応するのが一般的です(別建て運用)。柔整団体も「労災保険施術料金算定基準・自賠責施術料金上限目安表」を配布していますが、あくまで上限の目安であり、施術料や文書料は施術者と保険会社の合意(協議)で決まります(全国柔整鍼灸協同組合の目安表〈2024年10月1日以降適用〉、厚生労働省「労災保険柔道整復師施術料金算定基準について」)。
このため院内では、健康保険の療養費(レセコンで請求)と自賠責の書類を分けて管理するのが基本です。健康保険の受領委任・療養費のしくみは整骨院の受領委任・療養費(保険)入門に、レセコンとの役割分担はレセコンと患者管理システムの違いにゆずります。
対象・窓口負担・請求先で見る3制度の比較早見表
| 項目 | 自賠責保険 | 健康保険(療養費) | 労災保険 |
|---|---|---|---|
| 主な対象 | 交通事故による外傷性の負傷 | 日常の急性外傷(骨折・脱臼・打撲・捻挫等) | 業務中・通勤中の負傷 |
| 料金の基準 | 全国一律の公定表なし(労災基準を目安に協議) | 療養費の全国一律基準 | 労災の施術料金算定基準 |
| 患者の窓口負担 | 一括対応なら原則なし | 一部負担金あり | 原則なし |
| 主な請求先 | 自賠責保険会社/任意保険会社 | 保険者(受領委任) | 労働基準監督署 |
出典:国土交通省・厚生労働省の各制度案内。通勤・業務中の交通事故は労災が優先されるなど、状況で使う制度が変わります。
3つの請求方法|一括対応・被害者請求・加害者請求の違いと選び方

3つの請求方法は「誰が請求するか」と「お金の流れ」で区別します。実務では一括対応が多数で、一括対応が受けられない場合などに被害者請求・加害者請求を選びます。
一括対応(任意一括)|任意保険会社が窓口対応し院へ直接支払う
一括対応は、加害者側の任意保険会社が自賠責保険分を含めて施術費を立替払いし、後日その自賠責分を自賠責保険会社へ求償するしくみです。患者の窓口負担は原則ありません。ただし一括対応は法律や保険約款に定められた請求方法ではなく、任意保険会社のサービスとして行われるものです(日本損害保険協会「損害保険Q&A くるまの保険」問40)。保険会社の判断で一括対応が始まらない・終了することもあります。
被害者請求(自賠法16条)|被害者が自賠責保険会社へ直接請求
被害者請求は、被害者が加害者側の自賠責保険会社へ直接、保険金額の限度で損害賠償額の支払を請求する方法です(自動車損害賠償保障法第16条第1項の直接請求権)。一括対応が受けられないときなどに用い、施術費の領収書や施術証明書兼施術費明細書を添えて患者本人が請求します。
加害者請求(自賠法15条)|加害者が賠償後に自賠責へ請求
加害者請求は、加害者(被保険者)が被害者へ賠償金を支払った後、その支払った限度で自賠責保険会社へ保険金を請求する方法です(同法第15条)。いずれの方法でも、院が施術の事実と費用を示す書類を正確に作成する点は変わりません。なお被害者請求権は、損害および保有者を知った時から3年で時効消滅します(同法第19条)。民法改正で人身損害の一般時効は5年になりましたが、自賠責の被害者請求権は自賠法により3年のままです。
施術費明細書・施術証明書の書き方|実様式に基づく記入例

自賠責の施術費請求に使う基本書類は、施術費明細書と施術証明書の2点です。多くの保険会社・柔整団体では、両者を1枚にした「施術証明書兼施術費明細書」の一体様式が使われます。全国統一の一般公開様式が一律に決まっているわけではなく、様式は損害保険会社や柔整団体が配布する書式を用いるため、実務では各社書式に準じて作成します。
施術費明細書・施術証明書に書く項目チェックリスト
実様式に共通して置かれる記載欄は、次のとおりです。
| 記載欄 | 内容 |
|---|---|
| 負傷名及び部位 | 頸椎捻挫・打撲等の負傷名と部位(診断名ではない) |
| 施術開始日・施術終了日 | 施術期間 |
| 実施術日数 | 実際に施術した日数 |
| 転帰 | 治癒・継続・中止・転医の別 |
| 施術内容・施術料金 | 施術の内容と金額欄 |
| 患者氏名・保険会社使用欄 | 患者情報・保険会社の記入欄 |
出典:損害保険会社・柔道整復師団体の交通事故用様式(施術証明書兼施術費明細書)。様式のレイアウトや欄の配置は各社書式で異なります。
記入時に間違えやすいポイント
柔道整復師は診断ができないため、負傷名の欄には疾病名(診断名)ではなく施術対象の負傷名(打撲・捻挫・挫傷等)を記載します。施術証明書は医師の診断書ではなく、施術の事実と後療(施術)日数の見込みを示す書類です(日本接骨師会等の実務解説)。骨折・脱臼が疑われる場合は、医師の同意を得たときや応急手当を除いて患部へ施術できないため、整形外科(医師)の受診・同意を促す運用が適正です(柔道整復師法第17条)。文書料も法定されておらず、保険会社との協議で決まるため、金額を一律に断定しない対応が安全です。
なお、ここでいう自賠責の施術費明細書は保険会社へ提出する請求書類であり、患者へ交付する療養費・自費の一部負担金明細書や領収書とは、交付先も目的も様式も別物です。提出先は一括対応なら任意保険会社、被害者請求なら自賠責保険会社で、請求方法により請求書・同意書などの添付を求められることがあります。
自賠責施術費請求でつまずきやすい点と院内オペレーション

治療費打ち切り・支払い中止に備える記録の残し方
「打ち切り」は法令用語ではなく、任意保険会社による一括対応の終了を指す運用上の言葉です。施術の中断や記録の不備は終了の口実になりやすいため、他覚所見・症状の推移・施術の必要性を毎回具体的に施術録へ残すことが大切です(施術録の書き方は整骨院のカルテ・施術録の書き方を参照)。ただし施術の継続や打ち切りの可否は保険会社・医師の判断によるもので、記録は支払いを保証しません。過剰・長期の施術を正当化する記録ではなく、適正な施術の事実を残す目的で運用します。
施術記録・連絡履歴を患者管理で一元化する(レセコンと別建て運用)
自賠責の施術費請求書類は健康保険のレセプトと様式・算定が異なるため、通常はレセコン(健保請求)とは別に作成します。院内では、レセコンが健康保険の請求を担い、交通事故患者の施術記録・通院日数・保険会社との連絡履歴・再来案内は患者管理システムで一元管理する役割分担がとりやすくなります。治療院HUBは、この患者管理を担う業務管理システムです。自賠責・健康保険の保険請求機能そのものは持たず(レセコンと併用)、施術記録や連絡履歴の記録漏れ・再来案内の抜け漏れを防ぎます(患者管理は整骨院の患者管理を参照)。
よくある質問
Q1. 整骨院で交通事故の患者に自賠責保険は使えますか?
事故による外傷性の負傷で、施術と事故の因果関係が示せれば自賠責保険で施術費を請求できます。一括対応なら患者の窓口負担は原則ありません。ただし柔道整復師は診断ができないため、整形外科など医師の診断を受け、傷病名は医師の診断に基づく点に注意します。
Q2. 自賠責の施術費請求に必要な書類は何ですか?
基本は施術費明細書と施術証明書の2点で、多くは一体様式の施術証明書兼施術費明細書が使われます。請求方法に応じて保険会社所定の請求書・同意書・診断書などの添付を求められる場合があり、様式は各社書式に準じます。
Q3. 一括対応・被害者請求・加害者請求の違いは何ですか?
一括対応は任意保険会社が窓口対応し院へ直接支払う方式、被害者請求は被害者が自賠責保険会社へ直接請求する方式(自賠法16条)、加害者請求は加害者が賠償後に自賠責へ請求する方式(自賠法15条)です。一括対応だけは法定の請求方法ではなく、任意保険会社のサービスである点が異なります。
Q4. 自賠責の施術費は健康保険(療養費)と同じ料金ですか?
いいえ。自賠責の施術費には健康保険の療養費のような全国一律の公定料金表がなく、実務では労災の柔道整復施術料金を目安に保険会社と協議して算定します。療養費とは別建てで、院内ではレセコン(健保請求)と自賠責の書類を分けて管理します。
Q5. 自賠責の施術費請求はレセコン(治療院HUBのようなシステム)でできますか?
自賠責の施術費請求書類は健保レセプトと様式・算定が異なり、通常はレセコンの保険請求機能とは別に作成します。治療院HUBは保険請求機能を持たず、施術記録や連絡履歴の一元管理・再来案内を担う患者管理システムとしてレセコンと併用します。
まとめ
整骨院の自賠責保険 施術費請求は、一括対応・被害者請求(自賠法16条)・加害者請求(自賠法15条)の3つの方法があり、多くは一括対応で進みます。提出書類の基本は施術費明細書と施術証明書で、多くは一体様式の施術証明書兼施術費明細書を各社書式で作成します。自賠責の施術費は労災の柔整施術料金を目安に協議し、健康保険の療養費(レセコン請求)とは別建てで管理します。柔道整復師は診断ができないため記載は負傷名にとどめ、賠償金の交渉には踏み込まず、適正な施術・正確な施術録に基づく請求を徹底することが、打ち切りや返戻を防ぐ近道です。
交通事故患者の記録と再来案内を、患者管理で一元化
治療院HUBは整骨院・鍼灸院向けの業務管理SaaSです。交通事故患者の施術記録・通院日数・保険会社との連絡履歴・再来案内を一つに集約し、記録漏れや対応の抜け漏れを防ぎます。自賠責・健康保険の保険請求(レセプト)は既存のレセコンがそのまま担うため、乗り換えずに併用できます。
料金・機能の詳細や無料での製品体験は、お問い合わせ・資料請求からご確認いただけます。
著者・監修:依田尚人(YDAIコンサルティング株式会社 代表)
整骨院・鍼灸院向け業務管理SaaS「治療院HUB」を開発・運営。治療院の予約・患者管理、保険と自費の運用設計に関する情報発信を行っています。本記事は自動車損害賠償保障法(e-Gov法令検索)・国土交通省・厚生労働省・損害保険団体の一次資料に基づいて作成しており、特定の事案の賠償請求・示談交渉に関する法律判断は含みません。


