整骨院のクレーム・トラブル対応|そのまま使える文例とマニュアルの作り方【2026年版】
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整骨院のクレーム・トラブル対応|そのまま使える文例とマニュアルの作り方【2026年版】

2026年7月25日23分で読める

整骨院のクレーム・トラブル対応|そのまま使える文例とマニュアルの作り方【2026年版】

整骨院にクレームやトラブルが起きたとき、まず取るべき行動は反論や即答ではなく、「傾聴・事実確認・記録」の3ステップです。そのうえで、施術後の痛み・待ち時間・私物の紛失・返金や回数券といった類型ごとに、あらかじめ用意した文例と対応原則に沿って落ち着いて対応することが、トラブルの長期化と「言った言わない」を防ぐ最短ルートになります。

整骨院・接骨院で起きるクレームの多くは、施術そのものより対応の初動でこじれます。感情的な反論や根拠のない断定は信頼を損ない、法令上のリスクにもつながります。

本記事では、そのまま使える文例、根拠法令と対応原則の早見表、院内マニュアルと対応記録の作り方を、消費者庁・厚生労働省などの一次ソースを確認しながら整理します。

整骨院のクレーム・トラブル対応とは|基本3ステップと早見表

クレーム対応の基本は、どんな類型でも共通する「傾聴・事実確認・記録」の型を持っておくことです。この型があると担当者によって対応がぶれず、後から経緯を検証できます。

クレーム対応の基本3ステップ(傾聴→事実確認→記録)

第1に傾聴です。相手の話を途中でさえぎらず最後まで聞き切り、その場の弁明は事実が固まる前には避けます。第2に事実確認です。いつ・どの施術で・何が起きたのかを、施術録や予約記録と突き合わせて時系列で確認します。第3に記録です。訴えの内容・確認した事実・こちらの対応を、その場で対応履歴に残します。

この3ステップだけで感情的な応酬を避け、後日の水掛け論を防げます。

クレーム対応の基本3ステップ(傾聴・事実確認・記録)を示すフロー図
クレーム対応の基本3ステップ(傾聴・事実確認・記録)を示すフロー図

トラブル類型×根拠法令×対応原則の早見表【一次情報】

整骨院で起きやすいトラブルは、大きく4類型に整理できます。それぞれ関係する法令や枠組みと対応原則が異なるため、まず全体像を早見表で押さえてください。

トラブル類型主な根拠・枠組み対応原則
施術後の痛み・体調悪化柔道整復師賠償責任保険(任意加入)/広告規制上「治る」等の断定は不可傾聴・記録し、医師の診察を勧める。原因を断定しない
待ち時間・予約トラブル接遇・予約運用(法令上の定めはない)お詫びと再発防止の運用改善
私物の紛失・破損民法上の保管責任(掲示・預かりルールで範囲が変わる)事実確認・記録と貴重品の取扱い方針の整備
返金・回数券の中途解約消費者契約法9条/民法上の役務未提供分の清算契約内容と平均的損害の範囲で未使用分を精算

出典:消費者契約法(e-Gov法令検索)、柔道整復師法およびあん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(広告規制)。

整骨院のトラブル4類型と根拠法令・対応原則を整理した早見図
整骨院のトラブル4類型と根拠法令・対応原則を整理した早見図

【4類型別】そのまま使えるクレーム対応の文例

ここからは類型別に、そのまま使える文例と対応の考え方を示します。文例は自院の状況に合わせて調整してください。共通の注意点として、施術者は医師ではないため、症状の原因を「◯◯が原因です」と断定したり「必ず治る」と効果効能を保証したりする表現は避けます。柔整・あはき法の広告規制の趣旨にも沿います。

施術後の痛み・体調悪化を訴えられたとき

施術後に「かえって痛くなった」と言われた場合、その場で返金を約束することも施術を否定することも避けます。まず症状と経過を丁寧に聞き取り施術録に記録し、原因は断定せず、必要に応じて医療機関の受診を勧めます。

このたびは施術後にご不調を感じられたとのこと、ご不安をおかけし申し訳ございません。まず症状を詳しくお伺いできますでしょうか。念のため、整形外科など医療機関での診察もお勧めいたします。施術の内容と経過は記録しておりますので、今後については一緒に確認させてください。

施術に起因する健康被害が疑われる場合は、加入中の柔道整復師賠償責任保険の対象になりうるかを保険会社に確認します。この保険は施術ミス等による損害賠償に備える任意保険で、法律上の強制加入義務があるものではありません(出典:公益社団法人 日本柔道整復師会)。担当者が自己判断で賠償の可否を約束しないことが大切です。

施術後の痛み・体調悪化を訴えられたときの対応フロー図
施術後の痛み・体調悪化を訴えられたときの対応フロー図

待ち時間・予約トラブルへのお詫び

待ち時間や予約の行き違いは、施術の質と関係なく満足度を下げる不満です。原因を運用面で受け止め、お詫びしたうえで再発防止を伝えます。

本日はお待たせして誠に申し訳ございませんでした。ご予約のお時間にご案内できず、ご不便をおかけしました。予約枠と受付の運用を見直し、お待ち時間の短縮に努めてまいります。

無断キャンセルや予約の重複といった予約まわりの仕組みは、整骨院の無断キャンセル対策で解説しています。予約管理を整えること自体が、待ち時間クレームの根本的な予防策になります。

私物の紛失・破損を訴えられたとき

院内での私物の紛失・破損は、保管ルールと掲示の有無で責任の範囲が変わります。まず事実を確認して記録し、貴重品の取扱い方針を院として決めておきます。

大切なお品物の件でご不便をおかけし申し訳ございません。まず状況を確認させていただけますでしょうか。当院では貴重品はお客様ご自身での管理をお願いしておりますが、館内の状況を確認し、記録のうえ誠実に対応いたします。

貴重品の自己管理をお願いする掲示があるか、ロッカーや貴重品ボックスを備えているかで、事後の説明のしやすさが変わります。事前の掲示と記録が紛争を避ける備えになります。

返金・回数券トラブルへの対応

回数券や前払いプランの中途解約・返金は感情的な対立になりやすい領域です。整理したいのは、整骨院の回数券の返金が、原則として自院の規約と民法上の役務未提供分の清算、そして消費者契約法によって枠づけられる点です。

消費者契約法9条1項1号は、解約金や違約金を定める条項のうち「事業者に生ずべき平均的な損害の額」を超える部分を無効とします(出典:消費者契約法、e-Gov法令検索)。未使用分をほとんど返さないような高額な解約金条項は、その超える部分が無効になりえます。一方で同法は「未使用分を必ず全額返金しなければならない」と定める規定ではなく、返金額は契約内容と平均的損害の範囲で決まります。

なお、エステや語学教室などの「特定継続的役務提供」には特定商取引法の中途解約権がありますが、この対象は政令で定める7つの役務に限られ、整骨院・鍼灸院の通常の施術は含まれません(出典:消費者庁「特定商取引法ガイド」)。整骨院の回数券の返金根拠として特定商取引法の中途解約権を持ち出すのは適切ではない点に注意してください。

回数券の解約とご返金について承りました。契約時にお渡しした規定に沿って、ご利用済みの回数分を差し引き、未使用分を精算してご返金いたします。内容を一緒に確認させてください。

回数券の有効期限や失効の扱いなど、返金トラブルを生みにくい設計そのものは、整骨院の回数券・前売り管理で解説しています。

回数券の中途解約・返金対応の考え方を示す図
回数券の中途解約・返金対応の考え方を示す図

トラブルを防ぐ院内マニュアルと対応記録の仕組み

文例と原則が決まったら、個人の裁量に委ねず院のマニュアルと記録の仕組みに落とし込みます。属人化を避けることが、対応品質の安定と再発防止につながります。対応の遅れや記録の不備は、不満が低評価の口コミとして表面化する一因にもなります。口コミへの向き合い方は整骨院の口コミ・レビュー集めを参考にしてください。

対応フローとエスカレーション基準の作り方

マニュアルは、頻出する4類型それぞれについて「初期対応の文例」「事実確認の手順」「誰にいつ引き継ぐか(エスカレーション基準)」を1枚にまとめると実用的です。たとえば、返金を伴う場合や健康被害の訴えがある場合は、担当者判断で完結させず院長に引き継ぐ、といった線引きを明文化しておきます。

現場が迷いやすいのは「その場で約束してよい範囲」です。返金額の確定や賠償の可否は担当者が即答せず、必ず責任者が判断する運用にします。受付スタッフの初期対応を底上げする教育は、整骨院のスタッフ教育・接遇も参考になります。

対応履歴を顧客管理・カルテに残す(言った言わない防止)

クレーム対応で最も差がつくのが記録です。訴えの内容・確認した事実・伝えた対応・約束した内容を、対応日とともに整骨院の顧客管理の仕組みやカルテに残します。記録があれば担当者が変わっても経緯を引き継げ、「言った言わない」の水掛け論を避けられます。

対応履歴を予約・患者情報と一元化しておくと、次回来院時に前回の経緯を踏まえた対応ができます。患者情報の取扱いは個人情報保護法にも関わるため、保管・共有ルールは治療院の個人情報保護・プライバシー対応もあわせて確認してください。なお、療養費(受領委任)を扱う場合の施術録は、施術が完結した日から5年間の保存が求められます(出典:厚生労働省「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準の実施上の留意事項等について」平成9年4月17日保険発第57号)。これは施術録の保存義務で、クレーム対応記録の法定保存年数を定めるものではありませんが、あわせて残せば後日の確認に役立ちます。

トラブルを防ぐ受付・記録の仕組みを示す図
トラブルを防ぐ受付・記録の仕組みを示す図

よくある質問

Q1. 整骨院でクレームが来たら最初に何をすべきですか?

傾聴・事実確認・記録の3ステップです。まず反論せず相手の話を最後まで聞き、施術内容と時系列を施術録・予約記録で確認し、対応履歴をその場で残します。初動で断定や即答をしないことがトラブルの長期化を防ぎます。

Q2. 施術後に「痛くなった」と言われたら返金すべきですか?

その場で返金も否定もしないのが基本です。症状と経過を記録し、必要に応じて医師の診察を案内します。原因を断定せず、施術に起因する損害が疑われる場合は加入中の柔道整復師賠償責任保険(任意加入)の対象可否を保険会社に確認してから判断します。

Q3. 回数券・前払いの返金は断れますか?

未使用分の精算には応じる方向で考えるのが安全です。消費者契約法9条1項1号は、平均的な損害の額を超える解約金・違約金条項の超える部分を無効とします(出典:消費者契約法、e-Gov法令検索)。ただし同法は全額返金を義務づける規定ではなく、返金額は契約内容と平均的損害の範囲で決まります。整骨院の施術は特定商取引法の中途解約権の対象には含まれない点にも注意します。

Q4. 院内で私物の紛失・破損を訴えられたらどうすればいいですか?

保管ルールと掲示の有無で責任範囲が変わります。まず事実確認と記録を行い、貴重品はお客様自身で管理いただくよう掲示する、ロッカーや貴重品ボックスを備えるなど、預かり方針を整備してトラブルを未然に防ぎます。

Q5. クレーム対応マニュアルは何から作ればよいですか?

頻出する4類型の初期対応フロー、エスカレーション基準、文例、記録方法を1枚にまとめるところから始めます。対応履歴は顧客管理システムやカルテに残し、「言った言わない」を防ぐ運用を仕組み化しておくと安定します。

まとめ

整骨院のクレーム・トラブル対応は、傾聴・事実確認・記録の3ステップを土台に、施術後の痛み・待ち時間・私物紛失・返金/回数券という類型ごとに文例と対応原則を用意しておくことが要です。施術後の不調では原因を断定せず医師の診察を勧め、賠償の可否は任意加入の賠償責任保険を確認してから判断します。返金・回数券は消費者契約法9条と民法上の役務未提供分の清算で枠づけられ、特定商取引法の中途解約権は対象外です。対応履歴を顧客管理・カルテに一元化して記録することが、「言った言わない」を防ぎ再発防止につながります。


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著者・監修:依田尚人(YDAIコンサルティング株式会社 代表)

整骨院・鍼灸院向け業務管理SaaS「治療院HUB」を提供。治療院の現場実務と経営・法令対応の知見をもとに執筆・監修しています。

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