
整骨院のカルテ(施術録)完全ガイド|書き方・保存期間5年の根拠・電子化の手順【2026年版】
整骨院のカルテ(施術録)完全ガイド|書き方・保存期間5年の根拠・電子化の手順【2026年版】
「カルテは何年保存すればいいのか」「そもそも何を書けば監査で問題にならないのか」——整骨院のカルテ(正式には施術録)について調べると、サイトによって説明がまちまちで、法的根拠まで示した情報は意外と見つかりません。
結論を先に言えば、保険施術(受領委任)を扱う整骨院では、患者ごとの施術録の作成と、施術完結の日から5年間の保存が義務です。これは厚生労働省の通知と受領委任の取扱規程に明記されています。
本記事では、柔道整復・あはき・自費施術それぞれの保存義務を根拠付きの早見表で整理し、必須記載項目とSOAP形式の書き方、紙カルテから電子化への移行手順、カルテと顧客管理(CRM)の役割分担までを解説します。
結論: カルテ(施術録)は作成・5年保存が義務
整骨院・鍼灸院のカルテ(施術録)の義務は、施術の区分によって次のように整理できます。
| 区分 | 作成義務 | 保存期間 | 主な根拠 |
|---|---|---|---|
| 柔道整復・保険施術(受領委任) | あり(患者ごと) | 施術完結の日から5年 | 受領委任の取扱規程・平成9年4月17日保険発第57号 |
| はり・きゅう・あん摩マッサージ・保険施術(受領委任) | あり(患者ごと) | 施術完了日から5年 | あはき受領委任の取扱規程 |
| 自費施術のみ | 法令上の直接の義務なし | 5年を目安に保存(実務上の推奨) | — |
| 医師の同意書の写し(あはき) | — | 施術録とあわせて保存 | 受領委任の取扱い |
ポイントは2つです。第1に、義務の出どころは柔道整復師法ではなく保険(療養費)の受領委任の取扱いであること。第2に、起算点は「最後の施術日」ではなく「施術完結の日(転帰がついた日)」であることです。

法的根拠と保存期間
柔道整復師の施術録 — 受領委任の取扱規程と起算点
柔道整復師が療養費の受領委任を取り扱う場合、施術録の扱いは厚生労働省の通知「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準の実施上の留意事項等について」(平成9年4月17日保険発第57号)に定められています。同通知の第六は、療養費の支給対象となる施術について、所定の記載・整備事項を網羅した施術録を患者ごとに作成すること、そして「施術録は、施術完結の日から五年間保管すること」を明記しています。
起算点が「施術完結の日」である点は実務上重要です。たとえば負傷から治癒まで6ヶ月通院した患者なら、保存期間は初検日からではなく、治癒・中止・転医といった転帰がついた日から5年。長期間通院した患者ほど、初検時の記録を保存しておくべき期間は長くなります。「初検から5年経ったので処分した」は、施術が長引いた患者では保存義務違反になりうる、ということです。
なお、上位サイトの中には医科(病院・診療所)向けの規則を整骨院にそのまま当てはめて説明しているものもありますが、整骨院の施術録の根拠は医師法や療養担当規則ではなく、受領委任の取扱いに関する通知・規程です。保険者への照会対応や個別指導では根拠の正確さが問われるため、この区別は押さえておきましょう。
あはき・自費施術・レセプトの保存はどうなるか
はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師の保険施術(受領委任)も同様で、受領委任の取扱規程により、施術管理者は患者ごとに施術録を作成し、施術のつど必要事項を記入したうえで5年間保存することとされています。はり・きゅうの施術に必要な医師の同意書の写しも、施術録とあわせて保存します。
一方、自費施術のみの場合はどうか。柔道整復師法やあはき法そのものには、医師法の診療録のようなカルテ作成義務の規定は置かれておらず、施術録の義務は受領委任の取扱いを通じて課されるものです。つまり自費施術だけなら法令上の直接の義務はありません。ただし、施術内容の証明・患者とのトラブル対応・継続施術の品質のいずれの面でも記録は不可欠であり、保険分と同じく5年を目安に保存する運用が実務上の標準です。療養費支給申請書の控えなどの関連書類も、施術録とあわせて保管しておくと監査・返戻対応で慌てません。
カルテの書き方・記載項目
必須記載項目の一覧
保険発第57号の別添「施術録の記載・整備事項」では、施術録に記載すべき項目が具体的に定められています。主な項目は次のとおりです。
- 受給資格の確認(保険の種類・被保険者証の確認・氏名等)
- 負傷年月日・時間・原因
- 負傷の状況・程度・症状
- 負傷名
- 初検年月日・施術終了年月日
- 転帰(治癒・中止・転医の別)
- 施術回数
- 同意した医師の氏名と同意日(該当する場合)
- 施術の内容・経過
- 施術明細・施術料金の請求内容
監査や保険者の照会で問われるのは「請求内容と施術録の整合」です。具体的には、(1)負傷原因と負傷名のつじつま——「いつ・どこで・何をして」痛めたのかが負傷名と矛盾なく書かれているか、(2)施術日と請求日数の一致——施術録に記録のない日の請求がないか、(3)経過記載の具体性——毎回同じ文言の使い回しになっていないか。この3点が曖昧だと、返戻や個別指導につながりやすくなります。
患者からの照会(保険者がおこなう受診照会)で患者の記憶と施術録の内容が食い違うケースも、記載が具体的であれば施術録側の信頼性で説明できます。日々の数行の記録が、数年後の自院を守る証拠になります。
SOAP形式の記載例
経過記載の書き方として広く使われるのがSOAP形式です。患者の訴え(S: Subjective)、施術者の所見(O: Objective)、評価(A: Assessment)、施術計画(P: Plan)の4要素で毎回の施術を記録します。
S: 「階段の上りで右膝の内側が痛む。前回より痛みは軽い」 O: 右膝内側に圧痛あり、可動域は前回比で改善。腫脹は軽減 A: 回復傾向。荷重時痛は残存 P: 手技療法を継続、次回より運動指導を追加。来週2回の通院を提案
毎回「同じ文言のコピー」になっている施術録は、経過記載として評価されません。SOAPの4行だけでも「前回との違い」を必ず書く——これが監査にも施術の質にも効く最小ルールです。
紙カルテから電子化への移行実務
移行の4ステップと並行運用期間
紙の施術録から電子カルテ・記録システムへの移行は、次の4ステップで進めると失敗しません。
- 現在の紙カルテの記載項目を棚卸しし、移行先システムの入力項目と対応づける
- 新規患者から電子記録を開始する(過去カルテの一括入力はしない)
- 既存患者は来院のタイミングで基本情報のみ電子に登録し、紙とPDFスキャンで過去分を参照できるようにする
- 1〜2ヶ月の並行運用で運用ルールを固め、紙の新規記入を終了する
過去カルテを一括で打ち込もうとして挫折する——これが電子化の最も多い失敗パターンです。数年分の紙カルテの転記は現実的でなく、入力作業に追われて日々の記録が雑になれば本末転倒です。「新規は電子、過去分は参照できればよい」と割り切ることが、移行を完走させる最大のコツです。
もう1つの注意点は、移行後も紙の施術録の保存義務は消えないことです。施術完結の日から5年の期間内にある紙カルテは、電子化後もそのまま保管(またはスキャン保存の社内ルール整備)が必要です。電子カルテの選び方は整骨院の電子カルテ導入ガイドで詳しく解説しています。
カルテと顧客管理(CRM)の役割分担
電子化を検討するとき、カルテ(施術録)と顧客管理(CRM)を混同すると製品選びを誤ります。役割は明確に異なります。
| 項目 | カルテ(施術録) | 顧客管理(CRM) |
|---|---|---|
| 目的 | 施術内容の法的な記録 | 再来・売上づくり |
| 主な内容 | 負傷名・施術内容・経過 | 来院履歴・予約・配信・分析 |
| 義務 | 保険施術では作成・5年保存が義務 | 義務なし(経営ツール) |
施術録は「守りの記録」、CRMは「攻めの仕組み」です。たとえば施術録だけでは、60日来院が空いた患者の抽出も、予約リマインドの自動配信もできません。逆にCRMは施術録の法的義務を代替しません。両者を別物として、それぞれに適したツールを組み合わせるのが正解です。
1人院の現実的な構成例は、「施術録は紙または低価格の電子カルテで法的義務を満たし、予約・来院履歴・再来アプローチは月5,000円前後のCRMに任せる」という役割分担です。電子カルテの多機能プランで全部をまかなおうとするより、それぞれの役割に合った最小構成のほうが月額も運用負荷も抑えられます。組み合わせ方の全体像は治療院のシステム選び方 完全ガイドを参照してください。

よくある質問
Q1. 整骨院のカルテ(施術録)の保存期間は何年ですか?
保険施術(受領委任)の施術録は、施術完結の日から5年間の保存が義務です。根拠は受領委任の取扱規程と厚生労働省通知(平成9年4月17日保険発第57号)で、起算点は最後の施術日ではなく転帰(治癒・中止・転医)がついた日である点に注意してください。
Q2. 自費施術だけの院でもカルテは必要ですか?
柔道整復師法・あはき法には医師法のようなカルテ作成義務の規定がなく、受領委任に基づく義務も自費のみの施術には及びません。ただし施術内容の証明・トラブル対応・継続施術の質の面で記録は不可欠なため、保険分と同様に作成し5年を目安に保存する運用をおすすめします。
Q3. カルテには何を書けばよいですか?
保険施術では、受給資格の確認、負傷年月日・原因、負傷名、初検日・施術終了日、転帰、施術回数、施術の内容・経過、施術明細などの記載が求められます。経過はSOAP形式(訴え・所見・評価・計画)で毎回「前回との違い」を書くのが基本です。
Q4. 紙カルテを電子化したら原本は捨ててよいですか?
保存期間内の紙カルテの義務は電子化後も消えません。施術完結の日から5年の期間内にあるものは、紙のまま保管するか、スキャン保存の運用ルールを整備したうえで管理してください。新規分から電子記録に切り替え、過去分は期間満了まで保管する移行が安全です。
まとめ
整骨院のカルテ(施術録)は、受領委任を扱う限り「患者ごとに作成し、施術完結の日から5年保存」が義務です。記載項目は保険発第57号の別添に定めがあり、監査で見られるのは請求との整合と経過記載の具体性。電子化は新規患者から段階的に進め、紙の保存義務が残ることを忘れない。そしてカルテ(守りの記録)とCRM(攻めの仕組み)は別物として組み合わせる——この4点を押さえれば、記録まわりの不安はほぼ解消できます。
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