
整骨院の交通事故(自賠責)施術の必要書類|施術録・施術証明書・同意書の書き方と様式【2026年版】
整骨院の交通事故(自賠責)施術の必要書類|施術録・施術証明書・同意書の書き方と様式【2026年版】
整骨院・接骨院が交通事故(自賠責)施術で院側が用意する書類は、施術録(カルテ)・施術証明書兼施術費明細書・患者の同意書/委任状の3点が基本です。ケガの傷病名を確定する診断書は医師のみが発行でき、柔道整復師は発行できません(厚生労働省「柔道整復師法の施行について」昭和45年医発第858号)。
本記事では、必要書類の早見表、施術録・施術証明書の書き方、自賠責と健康保険の違い、初診受付から月次請求までの院内フローを、国土交通省・厚生労働省などの一次資料で整理します。慰謝料の算定や示談交渉は保険会社・弁護士の領域のため対象外とし、院側の書類と記録の実務に絞ります。療養費(健康保険)の全体像は整骨院の受領委任・療養費(保険)入門にゆずります。
【結論・早見表】交通事故(自賠責)施術で整骨院が用意する書類一覧
院側が用意する書類を、3点セット(施術録・施術証明書兼施術費明細書・同意書/委任状)を軸に工程別に整理します。

交通事故施術の必要書類チェックリスト(初診〜請求〜月次締め)【早見表・独自データ】
工程ごとに「誰が・いつ・どの書類を」用意するかを整理したチェックリストです。
| 工程 | 書類 | 作成・記入する人 | 提出先/保管 |
|---|---|---|---|
| 初診受付 | 事故発生状況の確認記録・患者情報 | 患者+院(受付) | 院内で保管 |
| 初診受付 | 同意書・委任状 | 患者が記入・署名 | 保険会社所定様式に応じ提出/控えを保管 |
| 施術開始 | 施術録(カルテ) | 院(柔道整復師) | 院内で保管(請求の根拠) |
| 月次 | 施術証明書兼施術費明細書 | 院(柔道整復師) | 保険会社(一括対応窓口/自賠責保険会社) |
| 請求 | 上記を添付して請求 | 院または患者 | 保険会社 |
整骨院が発行できる書類・できない書類(施術証明書と診断書の違い)
整骨院が発行できるのは施術証明書兼施術費明細書です。ケガの傷病名を確定する診断書は医師の業務で、柔道整復師は発行できません。

| 書類 | 整骨院(柔道整復師) | 根拠・補足 |
|---|---|---|
| 施術証明書兼施術費明細書 | 発行できる | 施術の事実・施術期間・後療日数の予定などを記載 |
| 診断書 | 発行できない | 診断は医師の業務。柔整師が傷病名を確定・記載すると医師法違反となりうる |
| 後遺障害診断書 | 発行できない | 医師が作成する(後述) |
自賠責と健康保険(療養費)は何が違うか【定義文+比較表】
自賠責保険は自動車事故のケガに対する損害賠償の保険で、健康保険の療養費とは請求先も様式も別制度です。両者を混同しないことが、書類の取り違え防止の第一歩です。
| 項目 | 自賠責(交通事故) | 健康保険(療養費) |
|---|---|---|
| 根拠 | 自動車損害賠償保障法 | 健康保険法・柔整療養費(保険発第57号) |
| 支払限度 | 傷害は被害者1名につき120万円 | 療養費の支給基準による |
| 窓口負担 | 一括対応なら原則なし(条件あり) | 原則1〜3割 |
| 請求先・様式 | 保険会社(施術証明書兼施術費明細書) | 保険者(療養費支給申請書) |
| 料金 | 法定の固定単価なし・労災基準を目安 | 療養費算定基準(レセコン) |
健康保険を使う場合は、交通事故が第三者の行為によるケガであるため、第三者行為による傷病届が別途必要になります(詳細は整骨院の受領委任・療養費(保険)入門を参照)。
交通事故(自賠責)施術とは|院側が最初に押さえる制度の基本
自賠責の補償の範囲と請求方法の違いを、院側の書類実務に直結する範囲で整理します。

自賠責保険の位置づけと補償の範囲(傷害の支払限度・慰謝料の考え方)
交通事故のケガ(傷害)に対する自賠責の支払限度額は、被害者1名につき120万円です(自動車損害賠償保障法施行令第2条、国土交通省)。この120万円は、施術費・文書料・休業損害・傷害慰謝料などを合算した上限で、診断書料などの文書料もこの枠内に含まれます。
自賠責の施術料金には法定の固定単価がなく、労災の柔道整復施術料金算定基準を目安に算定される運用が多いため、健康保険のレセコン請求とは別建てで管理します。
一括対応(任意保険)と自賠責への直接請求の違い
「一括対応」は、加害者側の任意保険会社が窓口となって治療費等を医療機関へ直接支払うサービスで、法律上の請求方法ではありません(日本損害保険協会)。法律上の請求方法は、被害者が自賠責保険会社へ直接請求する被害者請求(自賠法16条)と、加害者が立替後に請求する加害者請求(自賠法15条)です。
いわゆる「打ち切り」は法令用語ではなく、一括対応の終了を指す運用上の概念で、終了後も被害者請求(自賠法16条)で自賠責保険会社へ直接請求できます。打ち切りは症状固定を保険会社が一方的に確定させるものではないため、院は適正な施術記録の継続にとどめ、示談・慰謝料・損害賠償交渉には踏み込みません(弁護士法72条)。被害者請求権(傷害分)の消滅時効は、事故発生日の翌日から3年です。
【手順】交通事故患者を受け入れる院内オペレーションの流れ
受付から月次請求までを4ステップで整理します。書類の抜けは初診時の確認漏れから起きやすいため、担当者と様式を院内で決めておきます。

STEP1 初診受付:事故状況・保険会社の確認と同意・委任の取得
事故発生日と状況をヒアリングし、患者情報、加害者側保険会社の担当者名・連絡先、一括対応の可否を確認し、同意書・委任状を回収します。傷病名は医師の診断に基づくため、必要に応じて医療機関の受診・併診を案内します。
STEP2 施術録の作成:交通事故患者の施術録記載例【独自データ】
施術録は請求の根拠となる記録です。診断名や「治療」の語を使わず、負傷部位・受傷機転・自覚症状・施術内容・施術効果で記述するのが柔道整復師の記載方法です。次は交通事故患者の施術録の記載イメージです。
| 記載欄 | 記載例(表現の型) |
|---|---|
| 受傷日・受傷機転 | ◯月◯日、追突事故により受傷(患者申告・医療機関の診察あり) |
| 負傷部位 | 頸部・腰部の負傷部位(診断名でなく部位で記載) |
| 自覚症状 | 頸部の張り・可動時痛など、患者が訴える症状 |
| 施術内容 | 手技・物理療法などの実施内容 |
| 施術効果・経過 | 前回比の変化と継続の必要性(「痛み変わらず」の一言反復は避ける) |
健康保険分・自費分と区別して残し、保険会社からの照会に備えて事実を正確に記録します。施術録の一般的な書き方は整骨院のカルテ・施術録の書き方ガイドにゆずります。
STEP3 施術証明書兼施術費明細書の書き方と様式
施術証明書兼施術費明細書には、負傷名・施術期間・実日数・部位数・施術内容・費用などを記載します。負傷名は医師の診断に沿って記載し、柔整師が独自に傷病名を確定するものではありません。様式は損害保険会社所定のため、相手方の書式を使用します。
STEP4 保険会社・患者への請求と月次締めの流れ
月ごとに施術日数・内容・費用を施術証明書兼施術費明細書にまとめ、一括対応窓口または自賠責保険会社へ提出します。記録は実施した施術の事実に限り、日数や部位の付け増しはしません(過剰・水増しの請求は保険金詐欺につながります)。
施術録・施術証明書・同意書を書くときの注意点
診断・治療の語の扱いと、後遺障害の資料の役割分担を押さえます。書類の正確さは、柔道整復師の業務範囲を守ることから始まります。
「診断」「治療」の語を使わない柔道整復師の表現ルール
施術録や書類では、診断名の確定や「治療」という表現を避け、負傷部位・受傷機転・自覚症状・施術内容・施術効果で統一します。診断は医師の業務です(厚生労働省 昭和45年医発第858号)。広告でも「交通事故専門」「むちうち治療」などの症状・専門標榜は、柔道整復師法第24条の広告可能事項(限定列挙)に反します(違反は同法第30条で罰金の対象)。
後遺障害等級の認定で中心となる資料は、医師が作成する後遺障害診断書(正式名称:自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書)です。整骨院の施術録・施術証明書は、通院実態を補強する補助資料にとどまります。「必ず認定される」「打ち切られない」といった効果を保証する表現は使えず、個別の可否や紛争は医師・弁護士・柔道整復師会へ相談する旨を案内します。
| 書類 | 作成する人 | 役割 |
|---|---|---|
| 後遺障害診断書 | 医師 | 後遺障害等級認定の中心資料 |
| 施術証明書兼施術費明細書 | 柔道整復師 | 施術の事実・費用の証明 |
| 施術録(カルテ) | 柔道整復師 | 通院実態・施術内容の記録(補助資料) |
同意書・委任状で必ず押さえる記載項目
同意書・委任状では、患者情報・事故日・施術への同意・保険会社への委任の範囲などを押さえます。要否や様式は保険会社や一括対応の有無で差が出るため、統一の様式を断定せず、初回に窓口へ確認します。事故受付票は、問診の記録と同様に事実を正確に残します(問診の様式は整骨院の問診票の作り方を参照)。
交通事故患者を患者管理システムで分類・管理する【独自データ・運用事例】
自賠責・健康保険・自費が混在すると、書類の作成漏れや区分の取り違えが起きやすくなります。

自賠責・健康保険・自費を区分して来院を管理する運用
患者を「自賠責」「健康保険」「自費」のカテゴリで区分し、来院履歴・連絡履歴・書類の作成状況を紐付けて管理すると、区分の取り違えや作成漏れを防げます。治療院HUBはこうした患者管理を担い、保険請求(レセプト)は既存のレセコンが別建てで担当します。治療院HUB自体は保険請求機能を持たず、記録整備の道具であって請求額を増やすものではありません。
施術録・書類の電子管理と保存の実務
受領委任(健康保険)に係る施術録は、施術完結の日から5年間保存します(厚生労働省 受領委任の取扱い)。自賠責施術分は固有の保存年限が明確でないため、受領委任分と同様に控えを保存しておくのが安全です。電子で管理する場合は、患者情報の適正な取り扱いとセットで整えます(治療院の個人情報保護対応)。
よくある質問
Q1. 整骨院は交通事故のケガで「診断書」を発行できますか?
いいえ。診断書は医師のみが発行でき、柔道整復師(整骨院・接骨院)は発行できません。整骨院が発行するのは施術証明書兼施術費明細書で、診断・治療という語も使えないため、負傷部位・施術内容・施術効果という表現を用います(厚生労働省 昭和45年医発第858号)。
Q2. 交通事故(自賠責)施術で整骨院が用意する書類は何ですか?
主に(1)施術録(カルテ)、(2)施術証明書兼施術費明細書、(3)患者の同意書・委任状の3点です。加えて初診時に、事故発生状況の確認記録と、加害者側の保険会社による一括対応の可否を確認します。
Q3. 交通事故の施術費は健康保険(療養費)と同じように請求しますか?
いいえ。交通事故は自賠責保険が原則で、健康保険の療養費とは請求先も様式も異なります。任意保険会社が一括対応する場合はその保険会社へ、直接請求する場合は自賠責保険会社へ、施術証明書兼施術費明細書で請求します。
Q4. 整骨院の施術録だけで後遺障害等級は認定されますか?
いいえ。後遺障害等級認定の中心資料は、医師が作成する後遺障害診断書です。整骨院の施術録・施術証明書は、通院実態や施術の必要性を補強する補助資料で、単体で後遺障害を認定するものではありません。個別の可否や紛争は医師・弁護士・柔道整復師会へ相談します。
Q5. 交通事故患者を通常の患者と分けて管理するにはどうすればよいですか?
患者管理システムで「自賠責」「健康保険」「自費」を区分し、施術録・書類・来院履歴・作成状況を紐付けて管理すると、作成漏れや区分の取り違えを防げます。保険請求(レセプト)は既存のレセコンと併用します(レセコンと患者管理システムの違い)。
まとめ
整骨院が用意する院側の書類は、施術録・施術証明書兼施術費明細書・同意書/委任状の3点が基本です。傷病名を確定する診断書と、後遺障害等級認定の中心となる後遺障害診断書はいずれも医師が作成し、柔道整復師は発行できません。自賠責と健康保険は請求先も様式も料金も別建てのため、患者を保険区分で分けて記録を紐付けると、作成漏れや取り違えを防げます。
交通事故患者の書類と記録を、区分ごとに取りこぼさない
治療院HUBは整骨院・鍼灸院向けの業務管理SaaSです。患者を自賠責・健康保険・自費に区分し、施術録・来院履歴・連絡履歴・書類の作成状況をひとつに紐付けて、区分の取り違えや作成漏れを防ぎます。保険請求(レセプト)は既存のレセコンがそのまま担うため、乗り換えずに併用できます。
料金・機能の詳細や無料での製品体験は、お問い合わせ・資料請求からご確認いただけます。
著者・監修:依田尚人(YDAIコンサルティング株式会社 代表)
整骨院・鍼灸院向け業務管理SaaS「治療院HUB」を開発・運営。治療院の予約・患者管理、保険と自費の運用設計に関する情報発信を行っています。本記事は国土交通省・厚生労働省・日本損害保険協会などの一次資料に基づいて作成しています。


